ベートーヴェン交響曲第九番の合唱団に参加して
投稿者:坂東義一さん
70代
蓮沼西町会エリア内
町会員
皆さんは板橋第九合唱団をご存じだろうか。毎年12月になるとベートーヴェンの「交響曲第九番ニ短調『合唱付』」の演奏会が板橋区立文化会館で行われる。♪晴れたる青空 ただよう雲よ♪と日本語で歌う「歓喜の歌」としてお馴染みの曲だが、この曲の第四楽章の合唱部分を歌うのが素人集団の板橋第九合唱団である。もちろん経験者もいるが、私を含めて大部分はズブの素人。私は2回目の参加だが、中には20年連続という猛者もいる。合唱団は150人編成で、プロオーケストラの演奏をバックに歌うが、日本語でなくドイツ語だ。ドイツ語は初めてという人が多いが、本番は楽譜を見ることはできず暗譜で歌わなくてはならない。そこで歌詞を憶えるためのいろいろな苦労話を聞いた。中には歌詞部分にカタカナを書いて覚えた人もいるとのこと。私は幸いにもドイツ語を勉強したことがあり、少しは楽に覚えることができた。
本番の日が近づくと、ソプラノ、アルト、テノール、バスの各パート別の練習は終わり、合同での練習が始まる。そして指揮者による指導、オーケストラとの練習を経て、本番当日を迎える。今回は12月9日の土曜日が本番。オーケストラの演奏が第3楽章に進み、合唱団は上手、下手の二手に分かれて舞台袖に並んで待ち、第3楽章の終了と同時に上手、下手双方から舞台の後方に静々と並んで立つ。150人の合唱団が急に現れて、オーケストラ後方に居並ぶ光景は、ちょっと圧倒される感じだと思う。そしていよいよ指揮棒が振られ、私たち合唱団の出番である第4楽章が始まる。オーケストラと、ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの4人のソリストたちとの共演の始まりである。
約20分という短い出演時間であるが、この日のために3~4ケ月かけて何日も練習してきた成果を観衆に観てもらう最高の機会である。そう思うと一緒に歌っている皆の歌声は必死さが一瞬一瞬と滲み出て来ているようで、何と素晴らしい瞬間に自分は立ち会っているのだろうと感動を覚えるのである。演奏はいよいよ最終部分の大団円に差し掛かり、私たちの歌声を引き取ったオーケストラの力強いエンディングを迎えて演奏を終えるのである。そして演奏終了直後に沸き起こる観衆の喝采と拍手に包まれる私たち。
この瞬間のために練習を積んできたのではないかと感ずるのは私一人ではないだろう。まさにベートーヴェン第9交響曲万歳である。